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昔話シリーズ2 機転を利かす 藤田浩子編

機転を利かす 藤田浩子編

藤田浩子編著 小林恭子絵
ISBN4-87077-188-8
四六判 168頁+カラー口絵8頁
本体1300円+税
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ご感想

知識よりも知恵、なかでも頓知が危機を救う!
頓知は、人づき合いの潤滑油。頓知を働かせて喧嘩をせずにすんだり、上役をぎゃふんと言わせたり、波風立てずに言いたいことを伝えられたり・・・。現代人に足りない“頓知"がたくさんつまった昔話集。

強い者の無理難題を切り抜けるお話いろいろ
小僧さん和尚さん
  ふうふうぱたぱた・小僧と和尚様のだんごの話・ぼたもち五つ食う話・かみがない・鯉はかみそり・古寺の怪
語呂合わせ
  蔵と金・藁十六把・ももくり三年・無筆の手紙・数の嘆願書
知恵をしぼる
  にぁ~う・弁当の仕事・賢いわらし・親捨て山・試し斬り・金覆輪
してやったり
  馬の田楽・そりゃ嘘だ・愚か村話・橋役人・ほうび半分・桃割り


* 「子どもに説明するときに便利」と好評
昔の暮らし・道具がよくわかる カラー口絵
(上記のイラストは、本書掲載口絵の一部です)  
                      
私が子どもだったころ、といってももう60年も前の話ですが、そのころはどこの家庭も子だくさんでしたから、そここで子育てをしていました。おしめを取り替えながら「あんよのーびのび」と赤ちゃんの脚をさすっている婆ちゃんを見たり、おっぱいを飲ませながら語りかけている母親を見たりしながら、赤ちゃんのあやし方を身につけてきました。のど仏を見せながら「あめ玉がのどにつかえて苦しい!」とちょっと大きくなった子を騙している爺ちゃんを見たり、手を握りながら「手があたたかくなったからねんねの時間だね」と言う婆ちゃんを見たりしながら、いつのまにか子育ての知恵を身につけてきたように思います。
赤ちゃんがじっとこっちを見ていたら反射的に「いないいないばあ」とやってあやしてしまう、これはもう身に付いた知恵です。子どもが転んで泣いたら、思わず「いたいのいたいのとんでいけー」とか「ちちんぷいぷい」と言ってしまう、子どもが退屈そうにしていたら、手をとって「いっぽんばしこーちょこちょ」と子どもの手のひらをくすぐってしまう、これも身についた知恵です。そういうものを、私はいつのまにか周りの大人からもらって身につけてきました。そしてそれが我が子を育てるときになって、ごく自然に出てきたのです。

 今子育てをする人は育児書を見たり、テレビやインターネットで子育てを「学び」ます。子育ての「知識」を本やテレビから「学ぶ」のです。よその人の子育てを見ないまま大人になり、自分の子を抱くのが、赤ちゃんを抱く最初の経験という人が8割になってしまったのですから、仕方がありません。けれど、実際の子育てを見ながら身につけてきた子育ての「知恵」が、学んで頭に入れる「知識」になってしまった、この差はとても大きいと思っています。いつの間にか身につけて、思わず出てしまう「知恵」と、学んで身につけた「知識」を努力して使いこなそうとする、その差です。その努力にも頭が下がりますが、知識ではなく、知恵で育てたいと思う方には、ぜひ昔話を読んで(できれば聞いて)みてくださいとおすすめしています。

子育てだけではありません。生き方の知恵も身につけてきました。昔は大所帯で家の中に舅姑だけでなく小姑や手伝いの人たちなど、いろいろな立場の人がいましたから、子どもたちもその人たちのやりとりを見て育ちました。たとえ夫婦と子どもだけの家庭でも、本家の手伝いとか、村内の行事の手伝いとかで、他の家庭をのぞく機会もありましたし、他の家庭の子育てを見る機会もたくさんありました。つまり知らず知らずのうちに、周りの家庭のいとなみをまねたり、まわりの子育てをまねたりしながら、生き方の知恵を身につけ、世渡りの知恵を身につけ、人付き合いの知恵や子育ての知恵を身につけてきたのです。それを見ていた子どもたちもまた、いつの間にか生きる知恵を身につけて育ったのです。

 そうやって代々「なんとなく」伝えられ、「いつのまにか」身につけてきた「知恵」が、どこかで切れてしまったのです。私の時代には識字率が100パーセント近くなりましたし、経済の高度成長のおかげで核家族がふえましたから、親世代から教わるより本で学ぶことのほうが多くなりました。私の代から子どもの代へという時代にはテレビが家庭に入り込んできたので、子どもたちが親や周りの大人から学ぶことはさらに少なくなり、テレビから学ぶことが多くなりました。ここで「いつのまにか身につけてきた知恵」が伝わらなくなって、「メディアから仕入れる知識」が幅をきかせるようになってしまったのです。

 知識も大事ですけれど、もっと大事なのが知恵です。とりわけ頓知といわれる知恵は人付き合いの潤滑油でもあります。頓知を働かせることで、いさかいをせずに済ませたり、頓知を働かすことで命拾いをしたり、頓知を働かせることで上役をぎゃふんと言わせたり、現代人に足りないのはこの頓知ではないかと思えるのです。頓知を使えば、あとあとまでしこりを残さずに、問題が解決できます。頓知を使えば、周りに波風を立てずにこちらの思いを伝えられます。

 昔話の中で頓知を働かせるのは、主に身分の低い庶民や小僧です。和尚と小僧話は「一休話」としてもいろいろ知られています。各地で伝えられた小僧話が、一休さんという頓知に長けた実在の人物に集約されて一休話として伝えられたのでしょう。それは各地のちょっとずるがしこい知恵者の話が「吉四六話」に集約されたり、各地の名奉行の話が「大岡裁き」に集約されたりしたのと一緒です。

私が聞いてきた昔話の登場人物はほとんど名前がありません。「酒の好きな爺様」であったり「欲張りな和尚」「わがままな殿様」「ずるい役人」「賢い小僧」などです。東北には、集約されるほどの有名な実在人物が居なかったということもあるかもしれませんが、名もない人々の話として伝わってきたこと、そこがまたすばらしいと、私は思っています。

トルコには「ホジャ」という名前の賢い男がいました。児島満子さんとおっしゃる方がホジャの魅力にひかれ、それなりのお年になってからトルコ語を学んでトルコに行かれ、今せっせと紹介してくださっています。日本の話と同じようなのもあれば、まったく違う話もありますが、新しい話を読むたびに、どこの国にもこういう頓知のかたまりみたいな人がいたのだなぁと感心してしまいます。もちろんイギリスの昔話にも、ロシヤの昔話にも、洋の東西を問わず、頓知をきかせた知恵者の話はたくさんあります。そういう人たちから、もっともっと知恵を分けてもらえば、生きにくい今の世の中でも、きっとうまく生きていかれます。

ご感想が寄せられています。


・ 演劇部(中学)で扱えるものを探していました。「ひとこと」の欄がわかりやすく、役立っています。「言葉を変えてもいい」という作者のお考えが気楽にできてありがたいです。
(神奈川県・中学校教師・38歳)

・ 表紙の絵もとても可愛らしいし、話も方言がそのまま書かれていて味があり、内容も、どれも皆おもしろく、楽しめました。私は20代ですが、年齢に関係なくどの人も楽しめる一冊だと思いました。温かみがあり、良い本です。登場人物の知恵を見習いたいと思います。
(大阪府・20代)

昔話シリーズ1 「化かす騙す」
化かす騙す 藤田浩子編
日本図書館協会選定図書
藤田浩子編著 小林恭子絵
ISBN4-87077-187-1
四六判 168頁+カラー口絵8頁
本体1300円+税
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「遠藤登志子の語り-福島の民話」
遠藤登志子の語り
吉沢和夫&藤田浩子編
ISBN4-87077-140-6
四六判上製 564頁
本体3398円+税
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