こどもたちの夢を育てる 一声社
いっせいしゃ
ヨネやんのえらいこっちゃで〜
楽しいバックナンバーも、お時間がありましたらぜひどうぞ。
このページの一番下に主な記事の見出しがありますので、
興味のあるものからお読みください。


顎がはずれた〜の巻 2008.12.27

驚天動地、顎がはずれるようなビックリニュースが多い今日この頃。
実際に顎がはずれた経験はおありだろうか?
未経験の方に、心構えとしてお教えするが、「第1回目顎はずれ」は、かなり動揺しますわ。
でも、これから書く経験談をお読みになれば、大丈夫! はずれても慌てることはないでしょう(恐らく、もしかすると、かもしれないが、責任はもてない)

あれは、24〜25歳ごろですわ。

皆さんも、朝起きたら「あぁ〜!」とかって、あくびしてのびをしますね。
ちなみに、ハムスターもあくびして、のびをしますね、ビックリなことに。
まあ、彼らの場合は「朝」起きるわけではないのですが・・・。
とにかく、起きたら、 前足の1本を前にぐいぃ〜と伸ばし、同時に後ろ足も伸ばして背中をそらせ、口をあけて「のび」をします。人間の動作と同じです。その時、頭がへこむので、最初見たときは「脳みそはどうなったん」とビックリしました。

さて、わたしも起きたらすぐに、おおきなあくびと「のび」をするのが習慣でした。
「起きたでぇ〜!」という気合みたいなもんです。その習慣が途絶えたのは、24〜25歳ごろのあの朝からです・・・・・・。

いつものように起きて、眠い目をこすりながら、これまたいつものように、あくびとのびをして、「さぁ〜、起きよか!」と思った次の瞬間です。
「あれ、なんかおかしい。でも、なにが? えぇ? 口が元に戻らん!」
えらいことですわ。あくびして開けた口が、元に戻らんようになってしもたんです!
頭の中では、「どないしよ! なんとか元に戻さんと!」と焦っているのですが、全然口が閉まりません。
「大変や〜。このまま外に出なアカン。いや、それはできん。
よだれがどんどん垂れてるし、なんでこうなったか説明しようにも説明できん!口が動かんのやから!」
頭の中をぐるぐると考えが回ります。
「このまま治らんかったら、どないしょ。えらいこっちゃ〜」
よだれとともに、涙まで出てきます。
「救急車呼ぼかいな? アカン、電話しても、しゃべれへんやんか!」
絶望のふちに立たされ、口を開けたままがっくりとうなだれた、まさにその時です。ある考えがひらめきました。
「そや、顎の下を思い切り叩いて、無理やりはめたろ」
・・・そんな荒療治して、もしますますドツボにはまったら? いや、こうなったらやるしかない。・・・
やけっぱちになったわたしは、右手で顎の下を叩きました。向こう側から手前へ、 突き上げるように。
「かぽっ!」
見事な音を出して、顎がはまりました。
「ばんざい!おめでとう!よかったな〜!」
誰一人いない部屋の中で、観衆の喝采が聞こえてきます。
今度こそ、涙が流れてきました(よだれも一層)。
あ〜、よかった。医者に行こ!
その足で歯医者に行ったわたし。
それからというもの、時々はずれるようになってしまい、自分ではめているのです。
もし、どこかで、顎の下を叩いている私を見かけたら、それははずれた顎を直しているのですから、そっと見守ってください。

まさに、開いた口がふさがらん、話でした。(完)

今年も残りわずか。ほんまにえらいこちゃの年でした。 2008.1226



アメリカのビッグ3とかいう自動車大手(バッド3の間違いとちゃいますか?) に税金を注ぎ込もうという、法案にもびっくり仰天。
何がビックリといって、今までやれ「自由経済だ」「規制はするな」「市場に任せよ」と声高に叫んできた、 当のご本人たちが、国が強力に介入して、税金を使え!ということですから。どこが、自由経済やねん?

もっとビックリなんは、アメリカという国が決めた法律の中身。
「税金を注いでやるから、その条件として、たくさん首を切れ!」
なんか、おかしくないですかねぇ。
バブルがはじけて、好景気という泡が文字通り消えて、夢から覚めて現実に引き戻されたら、アメリカ経済が大変や、どないもならん、自動車産業はアメリカの象徴や!潰すな! という流れで、税金をぎょうさんいれるわけでしょう。
そのこと自体に「ちょっと納得いかん」と思うけれども、百歩譲って税金投入を認めたとしましょう。
この流れからすると、アメリカ議会は次のように言うはず。

「国民の大切な税金を、入れるんですから、それなりの覚悟をしてくださいや。
まず、役員の報酬は大幅にカットしなはれ。豪邸を売りなはれ。配当はなし。その上で、税金を入れるんやから、労働者の首は切ったらアカン。大量の失業者が生まれたら、経済は益々冷え込むからね」と。
ところが、「税金を入れてやるから、首を切れ!」ちゅうんです。

つまりは、国民はやらずぼったくり。税金は垂れ流されるわ、首は切られるわ、 地域経済はやっていけなくなるわ。
ほんまに、ビックリしすぎて、顎がはずれますわ。

ちなみに、皆さんは顎がはずれたことはございますか?
その話は、また次回のお楽しみ・・・。

本日のお題は、「間違い・留守番電話」。2008.12.17

 

休日に小社にお電話していただくとわかるのですが、留守番電話に切り替わります。
「はい、一声社です・・・」と私の声でメッセージが入っております。ところが・・・・。

つい先日の月曜日のことです。月曜日は休み明けなので、結構メッセージが入っています。
その朝もいつものように、出勤してまず留守番電話再生のボタンを押し、メッセージを聞いていると・・・・。
ちなみに、お声からすると、70歳は軽く超えたおばあ様。関西地方の方です。
(ここから先、(  )内は私の突っ込み、「  」内は録音されたメッセージです)

「もしもし、□□書院さんですか?」 
(一声社やって、名乗ってるや〜ん)
「TK市●2-2-6のKAと言いますけどね、お宅の出している本を送って欲しいんですわ。
前から欲しい、欲しい、と思うてたんですけどね、なんで手に入らないんですか?」

(注文したのに、届かへんのかな?)
「今日初めてお電話するんでけどね、注文の仕方もわからんしね、ここでええんですか?」
(なんや、初めて注文するんかいな! そら届かへんわいな)
「それにしてもね、せっかく電話してるのに、なんでおらんのですか? 土日祝は休みなんですか? なんで、休むんですか?」
(お休みくらいさせてよ〜。平日に電話して、休みに当たってしもたんやったら、文句の一つも言いたいやろけど・・・)
「それでね、▼シリーズのね、わたし、お宅のシリーズ、ぎょうさん持ってまんねん。
このシリーズもほとんど揃えててね、3巻と5巻がないんですよ、さっきから言うてるように。聞いてますか?」

(さっきからって、今初めて言うたんちゃいます? それに、相手は機械やから 「はい、聞いてます」とは返事せえへんと思いまっせぇ)
「そやからね、」
(何が「そやから」やの?)
「3巻と5巻、必ず送ってください。私は、TK市●2-2-6のKAと言います。□□書院さん! 頼んましたで!」

ここでガチャンと電話を切る音。
おばあちゃん、一声社いうて名乗ってるのに、長々としゃべって、それに注文までしてるがな。なんや、困ったなあ。ん?もう1件メッセージがあるわ。誰やろ?

「もしもし、□□書院さんですか?」
(また、おのおばあちゃんやん! そやから「はい、一声社です」ちゅうメッセージを聞いてから、吹き込んでやぁ)
「TK市●2-2-6のKAと言いますけどね、さっきも電話したのに休みで、今も休みですなあ。
(なんと、同じ日、つまり日曜日の朝と夕方に電話してるんです。そら、さっきも、今も、休みやろ)
▼シリーズのね、3巻と5巻! さっきお願いしたでしょう! もう、送りましたか?
(無理やろ、それは、いくらなんでも。日曜日の朝留守番電話に入れて、夕方にはもう送ってる、ちゅうことはないと思いまっせ〜。なんやら、難儀やなあ。□□書院さんの電話番号調べて電話したろかいな?)
「わたし、お宅のシリーズ、ぎょうさん持ってまんねん。このシリーズもほとんど揃えててね、調べたら3巻と5巻がないんですわ。」
(さっきも聞きましたで)
「それで、送ってくれ言うて、お願いしたんですけど、もう送りましたか?」
(無理ですわ)
「あのね、お宅が休んでなかったら話は早かったんでっせ。」
(日曜日くらい、□□書院さんにも休ませてあげてくださいや〜)
「それがね、あれから本棚見てたらね、3巻と5巻、あったんですわ。」
(あったんか! よかったけど、ちゃんと見てから注文せんと)
「そやからね、絶対送らんといてくださいや。送ってきても、お金払いませんで! もしもし、□□書院さん! 聞いてます?」
(いや、機械は聞いてるけど、□□書院さんは今は聞いてないと思いまっせ)
「土日祝は休みなんですか?」
(休みです)
「ほなら、絶対に送ってこんように! わたしは、TK市●2-2-6のKAと言います!
ほんまに、もう、なんで休んでんの〜!」

ガチャン、ツーツーツー・・・・・・。

くれぐれも相手を確認して電話しましょう。

占いとかそういうものすべては否定しません。 2008.12.10


すごく寒い中、街角でじっと座ってはる占い師を見ると、「ほんまにご苦労さん」と言いたくなります。
占いなどは、結局人生相談やと思うんです。寒い中で自分も苦労しながら、いろんな人の話を聞いて、たくさんの出会いの中から得た「生きる知恵」みたいなものを少し授けたり、迷っている背中をそっと押してあげたり、きっぱり言い切ってあげたり・・・。そういうお仕事とちゃいますかね。私自身は、全く信じてないけど、そういう役割があると思うんです。

テレビに出てる人は、はっきり一言で言えば、「儲ける」ためですわな。
焼肉のタレの前に、テレビをにぎわしてた顔の大きなおばさんの豪邸を見てくださいや。
何のためにやってるのか、ようわかります。
この方の何がアカンかというて、インターネット占いですな。横着極まりない。
楽して儲けようという極地ですわ。せめて、1人1人の話をじっくり聞いてあげて、その上でアドバイズしなはれ。

テレビ局がちょっと一番アカンでしょう。
オウム真理教のときに、あれだけ問題になったのを忘れたんですかいな?
オウム真理教のうさん臭いただのおっさんを、まるで超能力者みたいに仕立て上げたテレビの責任は大きいですよ。
おまけに、おまけにと言うてここが一番大事やけど、坂本弁護士一家殺害の共犯は、TBSですからねぇ。
坂本弁護士のインタビューを、放映前にオウムに見せて、それが殺害の引き金になったんですから。
しばらく、ワイドショーを自粛してたんでっせ。

もうひとつ。松本サリン事件の被害者・河野さんを、逆に容疑者呼ばわりしたのもテレビです。
ニュースステーションの特ダネでしたね。被害者が加害者に仕立て上げられる図式を、あんときは、よう見させてもらいました。
そういう反省が少しでもあるんやったら、昨今のスピリチュアルなんか、報道できひんと、気の弱い一市民は思いますけどね。

2008.12.9

ちょっと話は変わりますが、スピリチュアルだの、霊視だの、予言だの、1人のやり手が廃れても、また次の新しいやり手が現われますな。まさに雨後のタケノコ状態。信じてる人には申し訳ないけど、全く興味なし。小指の先ほども信じてません。スピリチュアル? いびり「チュートリアル」、の方がおもしろそうですやん。

なんやら、焼肉のタレみたいな名前の、着物を着たおっさんが出てますな。
あのおっさん、どこをどう見ても、「オーラ」が出てない(ファンの方、失礼します)。
私の目には、「太りすぎた、うさん臭い顔の、中村紀洋」にしか見えへんのです。
ほんまに、すまんこってすけど。

ちなみに、中村紀洋さんは、近鉄出身の野球選手です。なんちゅうたかて、こちとら近鉄ファンクラブに夫婦して入ってましたから。彼が出はじめの頃、ようエラーしたんですわ。日生球場や藤井寺でねぇ。野茂君が投げて、ファーボール連発(何せ、森監督の西武はバット振りませんからね、野茂の時は)、打たれたら中村紀がエラーする、ブライアントは音が聞こえそうなくらいの大振りで三振。
それでも、面白かったですねぇ。仰木監督と近鉄野球は。中村選手!楽天でもがんばってや!

それはともかく、死んだ人の声が聞こえたり、姿が見えたら大変ですよ! 
東京のスタジオなんか、おれますかいな。1945年3月10には、10万人からの人が焼き殺されてるんでっせ!恨みを持って! それをさかのぼること、22年前には関東大震災で、東京だけではないにしろ、10万5000人が死んでます。
このときは、無実の在日の朝鮮の方などが、ようけ叩き殺されてます(うまくしゃべれない・聞こえない聾唖の方、なまりの強い地方出身者にも犠牲者)。
そういう人々の縁戚の方、まだまだぎょうさん東京に住んでますよ。ものすごい確率で、そういう人とすれ違ってるでしょうよ。
死んだ人の声?姿? そんなん見えたら、24時間一生見続けても、足りんでしょう。怖くて、怖くて、しゃあない。顔に若く見えるライトを当てて、にこにこと笑うてられますかいな。
(続く)

2008.12.8

おっさんにからまれるの巻 その後

酔っ払いにからまれたこと2回。
あと1回は、やっぱりおっさんで、満員電車の中。
満員電車の中でものすごく背中を突っ張り、足を絶対に動かさないぞ!と、岩石のごとく踏ん張っている男の人がかなり多いんですわ。背中の突っ張り具合といい、足の踏ん張り具合といい、よう似通ってますから、どこぞにマニュアルでも書いてあるんとちゃうかいな、と思うてるんですけどねぇ。

それはともかく、入り口からは次々に人が入ってきますから、妙に踏ん張ってる人がおると、流れがそこで止まって、その男の真後ろなんかにおると、後ろからは押される、横には逃げられん、前のおっさんは背中を張って踏ん張ってる、それでものすごう変な格好でラッシュに耐えなアカンのです。これが、きついきつい。筋肉痛になりまっせ。

あるときも、満員などどこ吹く風で、背中と両手を張って、足を踏ん張り、日経新聞を読むおっさんがおったんです。あまりに、周りに無関心やし、こっちは立ってられへんしで、
「ちょっと、新聞読むんやめてくれへんか?」
と声をかけた途端、
「なんだよ、うるせえ」
「周りを見てや。お宅がそんなに場所とってたら、みんな困るやろ」
「うるせえんだよ。関西人は大阪に帰れ!」
「大阪には住んだことないわい! なんでもかんでも大阪言うな」
「んだよ〜。やるのか〜?」

という、全くばかばかしいやりとり。おっさんは、50歳くらいでしょうか。
前の酔っ払いは、60歳くらいと50代半ばくらい。
まあ、なんですな。こういう方に限って、
「最近の若いやつは、常識っちゅうもんがない。俺たちの若い頃は・・・」
とか、一席ぶってらっしゃるんですやろね。。

2008.12.7

酔っ払いの話の続き

若い女の子にカラム、酔っ払い。

「おっさん、おっさん。何しとんねん」 と声をかけると、
「何だお前は。この子の彼氏か?」
「そうや、悪いか!」
「えっ!これは失礼しました。お近づきのしるしにいっぱいどうです?」
「もうええから、離れてくれや。あっちで気分よう飲んどき!」
「ありがとう!握手をしよう!」
と、私に抱きついてきました。

ここでさすがに腹が立ち。

「酒臭い、向こうへ行けっちゅうてんねん!」
「すんまへん、大阪でっか?」
と、もうすごく、変なアクセントの言葉でしゃべりながら、酔っ払いは、千鳥足で離れていきます。
女子は相当怖かったのでしょう。しばらく、声も出んかったんですが、酔っ払いが離れると元気が戻り、
「向こうへ行け!」
と怒鳴っていました。酔っ払いが、弱そうなおっさんやったから、こっちも声をかけられたけど、まあ、見るからにその筋の人やったら、 柱の影から「ちょっと、そこの酔っ払いさん〜」言うて、静かに声を出してただけでっしゃろね。

2008.12.6

「何が非常識?」の巻

若い子は非常識や、という話は巷にあふれていますが、わたしはそうとも思うし、全くそうは思わない。
そう思うのは、お菓子の袋などを電車の床や道路に平気で捨てる子が少なくないこと。
それとて、タバコの投げ捨てをしているおじさん族がそんなことを言うても、何の説得力もありまへん。

非常識は歳に関係あらず!
ちなみに、わたしが電車の中でからまれたのは、3回ともおっさんです。
1回は、酔っ払い。連れ合いとの会社からの帰り、2人で話していたら、
「おうおう、仲いいのう。見せつけてんのか。おっ!なんだ!やるのか!」

もう1回も酔っ払いのおっさん。
飲み会の帰り、最寄の駅のホームで電車を待っていた時です。
時間も遅いので、ホームに待つ人も少なく、斜め前には若い女性が一人。文庫本を読んでいたわたしの耳に、
「えっ!」
という女性の声が聞こえてきました。
「なんや?」と声がした方を見ると、先ほどの若い女性の顔を、あきらかに酔っ払いと分かるおっさんが覗き込んでいます。
かなり接近して。
「またか」
正直、思いました。酔うてたら、何をしてもええと思うてるんかいな! 同じ年頃の娘くらいおるやろ!

(明日に続く)

2008.12.5

ショックなこと―続き
私を乗せた都営バスは、真砂坂上を過ぎ、富坂上を過ぎ、順調に走っています。

まだ、こっちを見ているお兄ちゃん。
「なんや? この兄ちゃん、いちゃもんでもつける気かいな?」
と、ちょっとムっとした、その瞬間です!

「どうぞ、お座りください」・・・・・・

なっ、なんと! くだんの中学生が、席を譲ってくれたのです〜!
あまりの突然の事態に、頭が回転せず、しばし呆然とたたずむ私。
「どうぞ」
さらに、その中学生は、席を勧めてくれます。

「ぼっ、ぼくは、そんな年寄りに見えるんか〜」
がっくり肩を落とし、憔悴しきった表情で、しかし、中学生の親切を決して無駄 にしてはいけないという理性だけは強く働き、やっとの思いで言いました。

「ありがとう。でも、すぐに降りるからええよ。ありがとう、な」

本当は大塚車庫前まで行く予定だったのに、慌てて2つも手前のバス停で降りた、 くたびれた中年の男こそ、わたしなのであった・・・。降りる際に、中学生に手を振ったことは言うまでもない。

中学生の勇気、そうです、ちらちらこっちを見ていたのは、「老人に席を譲らんとアカン。でも、思い切って言う勇気がない。いや、言わんとあかんで」という葛藤だったのでしょう。
勇気を振り絞った男子中学生に拍手を送りつつ、わが身をショウウィンドーに映しては、少なくなった髪の毛を触ってみる、たそがれの春日通り・・・。

それから、はたとわれに返り、会議場所までバス停2つ分に、大急ぎで走って行ったのは、言うまでもない・・・。(完)

2008.12.4

最近ショックだったこと・・・個人的なことですみません

最近、ものすごうショックなことがあったんです。
あれは、都営バスに乗ったときのこと。
我が社の近くに、春日通りという道路が走っていまして、これは御徒町から湯島天神の真横をすり抜け、後楽園の脇を通り、大塚の方に抜ける道です。
最寄の湯島4丁目から、大塚行きのバスに乗り、走り始めた頃ですわ。
バスの中は結構人が乗っていて、座席は皆ふさがっており、立っている人も結構おったんです。

話は違いますが、電車でも何でも、空いてる席を見つけたら遠くからものすごい勢いで走ってくる若い子を見ると、さすがに「ちょっとなあ・・・」と思いますね。すっ飛んで来る元気があるんやったら、立っといたら? と、突っ込みたくなります。そういうと、最近の若いヤツは!みたいな話にすぐ行くんですけど、 それはちゃいますね。非常識なんは、若いのも高齢者も関係ありまへんな。その
話は今度またゆっくりするとして、バスの話。

わたしが吊り革を持ってたっている前の席には、中学生くらいの男の子が、学生服を着て座っています。私は、立ったまま窓から外を見てたんですけど、その中学生が、ちら、ちら、とこっちを見ていることに気づいたんです。
最初は、「服に何か付いてるんかいな?」と思って、それとなく服やらズボンやら見たんですけど、全然付いてない。
それでも、まだ、ちら・ちら、とこっちを見上げています。
(明日に続く)

2008.12.2
地下鉄で通勤しています。
最寄の駅は、地上にあるんです。それが、やがて地下にもぐっていくんです。地下に入ったところから地下鉄かというと、地下に入る前の駅からすでに地下鉄の駅なんですね。地上にあるのに、地下鉄とはこれいかに? あんまり大胆に地下にもぐっていくもんやから、青空球児さんの疑問も出てきません。「地下鉄はどこから入れるんでしょう? 考えたら夜も眠れません」

さて、ある日の地下鉄車内でのこと。
連れ合いと一緒に夜遅く帰るとき、ある乗換駅から2人の若い女性が乗ってきました。
まあ、20歳そこそこでしょう。大きな声で危ない話をしています。

「・・・だから簡単だよ。人妻っていうことになってるからさ。えっ? 電話をこっちから途中で切っちゃダメなんだよ。お金もらえないから。息子は、小学校2年で〜、ダンナはふつうのサラリーマンなんだけどぉ〜、出張も多くてぇ〜、とか言うと、食いついてくるからさあ。え?やばくないよ。やばいことしないからさあ。おかしなヤツもいるけどさあ、腹立つけどさあ、お金欲しいから。我慢してる。金ヅルじゃん」

つまり、彼女は電話で鴨を引っ掛け、金を稼いでいるのでしょう。こんな女の子が何かに成りすまして電話して稼いでいるのところに、鼻の下を伸ばしたおっさんが金を注ぎ込む。情けない限りですな。この子らの会話を、おっさんに聞かせてやりたいですわ。

と、ここでハタと気づいたのは、この子らはわざと大きな声で会話してるんちゃうやろか?ということ。わたしらのバカバカしいなりすましバイトで、おっさんらは金を巻き上げられているんでっせ、と。教えてくれてんのんちゃう?

「援助交際」などという非常につまらぬ言葉は、未成年の女の子の方だけを攻め立てるための言葉でしょう。
未成年に群がるどうにもならないおっさんらは、タイやカンボジアなどで子ども売春にもかかわっている。
少女売春で逮捕されながら、「わたしは被害者」とのたまわって、その後政治家に転身した方もおられましたが・・・。
そうした方々が、若者のモラルが!とか言うたかて、なんの説得力もないと思いまっせ〜。

2008.12.1
ずいぶんご無沙汰をしてしまいました。申し訳ございません。
今月新刊の『読書ボランティア―活動ガイド どうする?スキルアップ どうなる?これからのボランティア』(広瀬恒子著)の追い込みで目が回っていたものですから・・・。

まあ、そうそう「煩雑」(はんざつ)・・・頻繁に更新しているわけではないのですが、2週間以上あいてしまいましたから、これは「未曾有」(みぞゆう)の事態です。前例を「ふしゅう」・・・踏襲して、深くお詫びいたします。
ここですでに、文章として「はじょう」・・・破綻しております。いつもいつも「じゅんぷうまんぽ」・・・順風満帆とはいかないようですね。

さて、ここで笑う方と、「一国のトップに失礼だ」「誰でも間違いはある。それをいちいちあげつらうとは!」というご批判もございましょう。それもごもっともです。言い間違いや読み間違い、勘違いなど誰にもあります。

ただ、ごもっともなれど、それやったら! と言いたいのです。
学力のごくごく一部さえ推し量れるのかどうかも怪しい「一斉学力テスト」をして、「どれだけ努力したのか公表せよ」と言い募り、点数の低いところには予算をつけない(バウチャー制)などというとんでもない(本音は教育予算を減らしたいだけなんちゃいます?)ことを声高に主張する人たちを、許していていいんですか? と。

子どもたちは発展途上です。たまたまそのテストの時の体調が悪くて思うように回答できない子もおりますわ。ゆっくり考えたらわかってるのに、テストやといつも慌てて勘違いする子もおるでしょう。
いつも10点やった子が、30点を取った、その努力を「よう、頑張ったなあ」と言うてやる大人でありたいですね。学力テストを推し進める人は、その子に「たった30点しか取れんのか!学校の平均点を下げおって〜!」と怒る人でしょうね。そういう方に限って、お偉い方の「間違い」や「失敗」、不祥事には極めて寛容ですな。「まあまあ、ええがなええがな。失敗は誰でもあるこっちゃ」とか・・・。

「学力が低い!ここの教育委員会は何をやってるんだ」とか、怒って見せるくらいやったら、かのお人にも言うて欲しいですね。
破綻を、(はじょう)と読むような方が、日本の経済をどないしよう、っちゅうんでっか?」と。

2008.11.16
詐欺師の話パート2(続き)

故郷が同じだといって安心させ、酔いつぶれた振りをして、お金もろともいなくなる。どういう男の話の続きです。

Hさんが持ち逃げされたと聞いて、部屋まで駆けつけたわたし。
「Hさん、昨日の男にお金を持って行かれたんですか?」
「そうなんや、まあ、しゃあない」
「でも、盛り上がってましたよね。故郷の話で」
「そうや、ころっと騙された。今から考えると、おかしいこともあったんや。
隣の町やった、という話になって、『Hさんの近くにも行ったことがある』とかいうんだけど、詳しい話になると答えなかったもんな。こっちはてっきり、何かのわけ有やと善意で思い込んでた。話せないわけがアルんやろ、と。同じ県出身やったかどうかさえ怪しい。でもまあ、騙された僕も悪い」
「そんなぁ〜。人が善すきますよ〜」
私が憤ったとき、同じ部屋にいた別の先輩Sさんが言ったのです。
「騙すよりも騙される方がええで。寮生は人がええねん」

そこまでの境地に達することができない未熟な自分。先輩らのようには思えん!
お金を持ってる奴から騙し取ったらええのに、なんで金のない寮生から、少しのお金を持って行くんやろ。
でも、そんな少ない金を持ち逃げするほどコマってたんかなあ。あんな芝居を打ってまで? 
やっぱり、よっぽどコマってたんかなあ? 
でも、絶対許せん! 人情を踏みにじったんやから!

行きつ戻りつ、考えても中々割り切れない、答えの出ない悩みに悶々とする、19の私なのであった・・・・。

(完)

2008.11.12
またまた出ました!詐欺の話―パート2(その1)

詐欺師は、忘れた頃にやってくる

スーツ詐欺師事件をさかのぼること、2年。あの時も、詐欺師と遭遇しました。とても気のよさそうな感じの人でしたが・・・。

あれは、やはり大学1回生の頃。男子寮に「その男」は、やってきました。

男子寮は、誰でも泊まれたんです。ひどいのは、同じ大学の学生。コンパで酔いつぶれた男子を、寮に放り込んで、自分たちはまた飲みにいくわけです。介抱は、寮生に任せて・・・。あと、他大学の学生で旅行中の人とか、いろんな人が泊まりにきます。もちろん、他の大学に泊めてもらうこともあるわけで、わたしも卒業旅行の際、香川大学の寮に泊めてもらったり、他にも泊まったことがありますね。

それはともかく、宿泊者が来ると、彼らが泊まる臨泊室に出向いて一緒に飲んだり、自分たちの部屋に招いて飲んだり、つまりはいつも飲んでるわけですね。

「その男」は、4回生の先輩の部屋に居ました。
「同じ故郷の出身なんだ! いやあ、偶然だねえ。懐かしいねえ」
わたしが部屋をのぞいたとき、先輩はもうすっかり出来上がっていて、「その男」と手を取り合わんばかりにして、飲んでいます。
ちなみに、飲むといったって、わたしたちはお金がないですから、安い酒と缶詰だの八百屋さんで調達した惣菜やら何やらで、飲んでいるわけです。
「えっ? 同じ故郷ですか? それは懐かしいですね。そんなことがあるんですね」
先輩のあまりの喜びようにこちらまで嬉しくなって、少しの間一緒にのみ、わたしはまた次のコンパへと出かけました。
例のごとく酔いつぶれて、翌朝(もう昼だったような・・・)寮の部屋で目を覚ましたわたしは、顔を洗いに洗面所にいった時、別の先輩からよからぬことを聞かされました。
「ヨネ、知ってるか?」
「何をです?」
「H先輩が、お金を持ち逃げされたんや」
「えっ?誰に?」
「昨日、Hさんの部屋に泊まった奴や」
「えっ〜!僕も一緒に飲みましたよ〜!」
「田舎が一緒や言うて安心させて、Hさんが朝起きたら、その男もお金もなくなってたらしいで」
なっ!なんと! そんなことがあるんや!
昨日のことを思い出しながら、憤りがふつふつと沸き起こるわたしなのであった!
(つづく)

2008.11.08
詐欺師の話続き

 さあ、社会人としての心得のようなものをとうとうと述べて、いかにお徳なのかをあくまでソフトに語りかける紳士の話にすっかり聞き入っていたわたしでしたが、貯金の額を聞かれた途端、眠っていた脳の回路がショートしました!
なに〜! 貯金の額を教えろだぁ〜?

「人の貯金の額を聞くのも、社会人として当たり前ですか?」

「いえいえ、お気を悪くなさったのなら失礼しました。あくまで、そちら様のお得になるようにと。こんな上等なスーツを、ここまで値下げたのですからね。。」

「まあ、おおきなお世話ですわ。貯金はいくらかは言えません。スーツも買うつもりはありません。
社会人になって困るんだったら、そのときに考えますわ」

「そう、むきにならないで。わたしもね、忙しい身なんですよ。ここまで時間を取って説明差し上げたのに、そういうおっしゃり方はないんじゃないですかぁ? スーツは必需品ですよ」

「スーツの要らない職場で働きますわ」

「そんな屁理屈を。社会では通用しませんよ。A君、帰ってもらいなさい! せっかく、親切で提案しているんだ」

 態度が豹変したおじさんにますます不審を抱きながら、車を降ろされたわたしは、車のナンバーを見ようと後ろに回った途端、スピードを上げて走り去ってしまいました。
なんか、あやしいなあ。でも、ほんまに親切で言うてくれてたんかなあ?
自体がまだ飲み込めていない未熟者のわたしが、彼らの正体を知ったのは数日後・・・。

「生協の名をかたってスーツを売りつける詐欺事件が発生しました。被害にあわれた学生もおられます。こうした業者と生協とは一切関係ありません」
生協の食堂前に張り出された文書。

「おお〜、あのときの奴やなぁ。僕には百貨店とか言うてたけど、生協の名前を出して騙したんか! 危なかったなあ。こっちも危うく乗ってしまうとこやったでぇ。実は何日か前な・・・・・・」
友人に詐欺師の話を説明するわたし。かわいそうな被害者の学生・・・。

仕送りはなく、バイトバイトで汲々の生活をしていたわたしでさえ、一瞬「お得やな。社会人になるんやったら、買うといた方がええかな。今買うても、後で買うても一緒やったら、買うといてもええかも・・・」、と思ってしまったのです! 10万円じゃなくて、1着5万円なら、もしかしたら買うてたかもしれません。
生協の食堂で、今日は定食はやめとこ、うどんだけでええか、と悩んでいるわたしが、そんな額を出そうかな、と思ったんですからねぇ。

詐欺師の口車にほとほと感心しました。ものすごい話術やなあ。うまいなあ。

でも、その時かたく思いました。詐欺師と勝負するのは、北の湖と相撲をするようなもんや。はなから勝負が決まってる。ウマい話には絶対乗らんこっちゃ。
自分を過信したらアカン。
そうです。自分がその分野に詳しい、玄人なみや、自信がある、そういう人ほど騙されやすい。
「主婦がFX株で大儲け」などなど、テレビなどがいくら煽り立てても、素人さんが株だの先物だのそんなものに手を出さんことです。カリスマ投資家とか言う人たちがその後どうなったか・・・。危ない、危ない。

今日の格言  君子危うきに近寄らず


2008.11.07
ついつい話に引き込まれて聞き入る未熟者の貧乏学生=わたし。
くだんの紳士の話は、まだ続きます。
「ここにね、今流行のデザインの、上等なスーツがあるんです。KT百貨店の催しに、上司を説得して出展して、まあもちろん売れたんですがね、上司の手前、完売にしたいんですよ。そこでね、このスーツは大変高価なものなんだけれども、 そういう事情ですから、半額くらいで買ってくださる方を探していたところ、この大学の先生から、お声をかけていただきましてね、こちらに参った次第です。」

「どの教授ですか?」

「いえ、それはご勘弁下さい。お客様のお名前は言うわけには行きません。社会人になられたら、そこらあたりは十分に気をつけた方がよろしいですよ。  まず、モノをしっかり見てください。おい、A君、あのデザインのものと、例のアレをお見せしよう。」
部下(役?)に命じて、後ろの箱からスーツを5着ほど出した上で、2着について説明を始めます。

「この衿をご覧ください。このカットが今流行なんです。ご存知ですか? ご存じない? 
社会人になられたら、そこらあたりは敏感になられたほうがいいかもしれませんねえ。縫製もしっかりしてますでしょう。ちょっと、はおってみてください。いやあ、これが合うかなと思っておりましたが、ピッタリですねぇ。ねえ、A君。
このスーツなら10年20年持ちますよ。もちろん、こちらのスーツもお勧めなんです。
本当は値下げして売るようなものじゃないんですけどね。これも上等でしょ。
ずばり言いましょう。2着で10万円でいかがです? 1着10万円以上しますよ。
こんな機会は滅多にない。半額以下ですからね。
えっ? お金がない? もちろん、そうでしょうとも。残念だなあ、こういうチャンスはないんですがねえ。でも、人生は出会いですから。こうしてお話させていただくのも一つの出会い。学生さんの人柄にほれました。うちの会社に来て欲しいくらいだ。
う〜ん。そうだなあ。失礼ですが、貯金はいくらありますか? いえ、その範囲内で何とかお買い求めいただけるよう、こちらもぎりぎり努力しますから。いかがです?」

明日に続く〜

008.11.06
怪しい2人連れの車に、まんまと乗り込んでしまった私。
ドアノブを握ったままシートに座ると、怪しい2人はまたまた優しく語りかけてきます。
「私たちは、スーツの販売を手広く行っているものです。○○って会社、ご存じないですか?」
「全く聞いたことありません」
「そうですかぁ? 結構宣伝しているんですけどねえ。A君、あれ、うちのCMはどこの局で流してたっけ?」
(この頃は、全くと言っていいほどテレビを観ていませんでした。テレビ室に1台あるテレビで、仲間や先輩と一緒に、阪神戦、プロレス中継、ザ・ベストテン、などを見たくらいでしょう)
「いえ、実はね。KT百貨店の催しに出展していたんですがね、いや、うちは他で儲けているから乗り気ではなかったんですが、百貨店さんから是非にと頼まれたもんだから。それで私が社長に掛け合って、百貨店さんの顔を立てましょう!そういうことで出展したんだけど、、ちょっと売れ残ってしまったんですよ。 失礼ですが何回生ですか?」
「3回です」
「そうそう、すると就職活動なんかはもう? まだ? そろそろ始めないとね。 いや、それで、大変失礼だけども、スーツは持っておられますか? えっ、1着持ってる?」
(あまりのみすぼらしい格好なので、当然1着も持って無いと思ったのでしょう)
「でもね、就職すると、スーツは何着も持って無いといけませんよ。毎日同じ服というわけにはいきませんから。なあ、A君、キミは何着持っている? 5着?  そうだよね、でももっと持って無いとダメじゃないか、キミ〜。いや、でも本当にぎりぎり最低3着は必要ですよ」
「そうですか、でも買う金もないですし」
「いえ、学生さん、失礼だけども、お金の問題じゃないんですよ。社会人としての貴方ご自身の信用、いえ、対外的にはその会社の信用にかかわることなんですからねえ。みんな就職してから、慌てて高いスーツをたくさん買い込むんですよ。 そこでね、最初にご説明したように、私どもはスーツ専門の会社でしてね、少々値が張るんです。粗悪な安物を売る会社じゃないですから。でもね、安物はすぐダメになってまた買い換える。上等なものは値が張ってもいつまでも着られて、 結局はお得なんですよ。・・・・
あくまでソフトに、流れるように話していきます。ついつい話に引き込まれる私。
危うし!(づづく)
2008.11.05
昔のことを考えていたら、詐欺師のことを鮮明に思い出しました。
詐欺師の口は、よう回りますねえ。びっくりです。

あれは、大学時代、ある夏休み中の猛烈に暑い日。
わたしは、大学のプールでひと泳ぎしようと、例の如くスリッパを履いて、古ぼけたTシャツにジャージのズボンをはいて、ぺったら、ぺったら、とプールに向う大学構内の上り坂をのぼっていました。

わたしらの大学のプールは、近所の親子連れも気軽に泳ぎに来ていた、開かれたのどかなプールやったんです。私もしょっちゅう泳ぎに行っていました。なんせ、暑いですし、大学のプールで泳ぐ分にはお金がいらんわけですから。それが、文部省からの変わった天下りさんが一変させました。フェンスを高くして、カギまでかけて、泳ぐのにいちいち名前を書かされるようになったんです。別に、事故が起きたわけでもないのに。

さて、話を元に戻しましょう。
ぺったら、ぺったら、と坂を上っている私に、誰か声をかけました。
「ちょっと、ちょっと、すみません」
あたりをきょろきょろすると、後ろから走ってきた車の人が、私を呼んでいるようです。
道でも聞かれるのかと思い、「なんですかぁ〜」と言いながら車に近づいた私に、そのまだ若そうなおじさんは言います。
「こちらの学生さんですか? ちょっとご相談がございまして。外は暑いでしょう。どうぞ車の中で。クーラーもきいてますから」
あくまで物腰は柔らかく、丁寧に話しかけます。
「なんでしょう? どこかの研究室をお探しですか?」
「まあまあ、立ち話もなんですから」
すぐに用件を切り出さないことにちょっと不審を感じつつ、車に乗り込みました。
私を拉致しても身代金は出せないですし(スリッパにTシャツとジャージの粗末な学生を誘拐しようともおもわんでしょう)・・・、

車に乗り込むと、なんともう1人ちょっと年配のおじさんも乗っています(窓が真っ黒で、外からは中が見えなかったのです)。ますます、けったいやなあ。芸能事務所のスカウトかなあ。なんか、怪しいなあ。ソフトな印象の2人とは裏腹に、危険信号が点滅します。やっぱり、その筋かも・・・。(続きは、明日)

2008.11.02
新しいものに飛びついて失敗した・の巻

新しいもの・人気のものは、ちょっと引いて冷静に考えた方がええのとちゃいますか? という話をしました。連れ合いと話していて、飛びついて失敗した例を思い出しました。

あれは、小学校3〜4年生の頃・・・。
すごいものが発売されたんです! 「象が踏んでも壊れない、アーム筆入れ」
テレビコマーシャルを見ると、あの巨大な象さんが、筆箱を踏んでいます! 
なんで、象がおるところに、日本の筆箱がおいてあるんやろ?しかも誰も使うてない、新製品でっせ! という疑問はこの際、横に置いときましょ。

えらいこっちゃ、ものすごい丈夫やなあ。象が踏んでも壊れてない。あれを買うたら、一生使えるんとちゃうやろか?

すっかりコマーシャル映像に影響された私は、母に頼み込みます。
「なあ、象が踏んでも壊れへん筆箱買うて!」
「今持ってるやつ、まだ使えるやろ? モノを大事にせえへん子には、買わんで!」
・・・痛いとこ突いて来たなあ。(でも、相当物持ちは良かった方です。どんな文房具も大事に使うてましたから)
「でもな、アーム筆入れ買うたら、一生筆箱買わんでええんやで」
「うそばっかり、そんな筆箱あるわけないやろ」
「テレビで言うてるもん」

結局、熱意に負けたのか、ついに買うてくれたんです。新しい筆箱というだけで心底嬉しいのに、象が踏んでも壊れへん奴ですよ!新製品ですよ! 飛び上がるくらい喜びました。

筆箱を手に入れて、学校に行った私は、もう、朝からニコニコしてますね。みんなに見せたくて仕方ないんです。隣の席の子が、ついに見つけてくれました。
「アーム筆入れやん」
「そうや、買うてもろたんや。象が踏んでも壊れへん奴やで〜」
得意満面の私に、彼は冷たく言い放ちました。
「それ、ウソやろ?」
・・・なに〜? 僕の筆箱にケチつけるんか? うらやましがると思うてたのに、 ケチをつけられた私は、むっとしました。
「象が踏んでも壊れへんのや。見ててみ!」
私は買うたばかりの筆箱を床に置いて、踏んでみました。
「ほれみてみい。壊れへんやろ」
彼はさらに追い討ちをかけました。
「子どもが踏んでも壊れへんやろ。象が踏んだらどうやろな?」
・・・なに〜! おちょくってんのかいな。
「ほなら見ててみ!」
私は筆箱を床に置いたまま、イスの上に上り、
「ここから、落ちて踏んだらわかるわ〜」
「やめとけ」「なあ、壊れるで〜。やめときや〜」
騒ぎを聞きつけた近くの子らが、口々に忠告します。なんやら注目されてますます得意になったことと、引っ込みがつかなくなったのとで、
「まあ、見とけや」
そう言うが早いか、そらっ! イスから筆箱の上に飛び降りたわたし。
次の瞬間、メリッという不気味な音と共に、買うたばかりの筆箱は、壊れたのでした・・・。
・・・そんなぁ。象が踏んでも壊れへんのに、なんで僕が踏んだだけで壊れるん?
頭の中は、パニックになっています。
「そやから、やめときって言うたやん。大丈夫?」
女の子達に心配されると、粋がらないわけにはいきません。
「大丈夫やって。この筆箱、今日は調子が悪かってん」

滅多に買うてもらえへん新製品を、せっかく買うてもろたのに、たった1日で壊してしもた・・・。
いや、壊れてても使える。鉛筆を入れる分には、全然問題ない。
そう自分を納得させて、使い続けました。あれほど頼み込んで買うてもろた親には、黙ったままだったことは言うまでもありません。
(ただし、親はすぐに気づいたようです。でも、次から次に買い与えるのは子どもに悪いことを教えることや、と見てみぬ振りをしていたのでした。ですから、次の筆箱を買ってもろたんは、いつもの周期よりもよほど早かったのです)

未だに忘れることの出来ないコマーシャルの罪と、新しいものに飛びつく危険性を、初めて胸に刻んだ小学校3〜4年生の私なのでした・・・。

今日の格言  論より証拠

2008.11.01
電話の話をしました。ある年齢以上には懐かしい、「呼び出し」電話。
若い方は御存知ないでしょうが、昔は電話がある家が少なかったものですから、クラス名簿の連絡先に、人の家の電話が書いてあるんです。
かくいうわたしの名簿にも、向かいのアパートに住むWさんの電話番号が書いてありました。
「呼び出し」という意味の(呼)が付いてね。
これは電話が少ないという絶対条件の上に、人情(近所づきあい)という必要条件が重ならないと成立しませんわね。自分の家の電話に、人の家あての電話が掛かってきて、しかも、「ヨネさ〜ん! 電話やでぇ〜!」いうて、呼びに行かされるわけですから!
かくいうわたしも、例のごとく忘れ物をけっこうしたものですから、学校の校門前の文房具屋(確か、やまと という屋号)の前にある公衆電話から、Wさんの家に電話します。お金を持っているわけ無いから(金銭を持って行くのは、御法度でしたから)、たぶん教師に借りたんでしょう。返した記憶が全然無い。
「もしもし、ヨネです。お母ちゃんを呼んでください」
「あ〜、ヨネ坊。ちょっと待っときや〜。今、呼びに行って来るから〜」
そんな感じで家に呼びに行ってくれます。
そのうち、バタバタとつっかけの音がして(音からして、怒っている感じや〜)、
「どないしたん、また忘れ物?」
「うん、コンパスと定規、忘れた〜」
「そやから、昨日のうちにちゃんと時間割合わせときや〜いうて、言うたやろ」
てなぐあいで、持ってきてくれたりします。
母は銭湯の風呂炊きや掃除やら、お手伝いさんやら、うどん屋の洗い場やら、いろんな仕事をしていて、外で働いているときは呼び出しもできませんが、家で内職もしていることがあって、そんな時は(呼)が効果を発揮するわけです。

Wさんもほんまに嫌な顔もせんと(恐らく・・・)、呼びに行ってくれました。
持ちつ持たれつなんですから、Wさんにお返しは出来なくても、呼び出しの精神は大切にして、誰かに返していきたいものです。

ふと気が付いたら、母は再々登場していますが、父が全く出てきていませんでした。おらんかったんか?と思われるとナニですから、ちょっと紹介しましょう。
父は建具職人です。工務店をやっているわけでなく、職人として働いていたのです。母は、ようしゃべりますが、父はあまりしゃべらず、口よりも手が先に出る感じ。年子の兄とよう喧嘩してたんですが(原因がまたセコくて、どっちのおかずが大きいとか、どのチャンネルが見たいとか、ゲームでどっちが勝ったとか負けたとか・・・)、特に食事時に喧嘩していようものなら・・・。父の怒りには、
順番があって、まず不機嫌な顔をして、次にじろりと睨み、3番目に「そこらへんで、やめとけよ」と一言いい、それでも喧嘩をやめんかったら、「ええ加減にしとかんかい!」と怒鳴り、間髪いれずに私らをぽかりとたたき、それでもうるさかったら玄関に放りだす!
若い方が読むと、しょっちゅう怒っている母といい、この父といい、「まあ、なんていう親でしょ」と思うかもしれませんが、わたしらの周りの親はどこも似たようなものでした。

アパートの階段が「ダダダダ、ドドドド」と音がして、「待たんかい〜!」というおばちゃんの怒鳴り声がすると、しばらくしてN君とお兄ちゃんの2人の泣き叫ぶ声がします。
「ごめん〜。もう、せえへんから〜、ごめ〜ん」
N君兄弟は、僕らの大の仲良しで、アパートの2階に住んでいました(カラーテレビを持っていたので、『巨人の星』を見せてもろてたんです)。
おばちゃんは豪快な人で、ほうきを持って、2人を追い掛け回していました。
もちろん、僕らも母にほうきでケツを叩かれたりしましたが・・・。
まあ、どこもかしこもお上品でなく、たくましい感じでしたね。

2008.10.31
今日も電話がかかってきました。何の電話かといえば、電話の電話です。
「通話料がお安くなります」「通話料を値下げいたしましたので、そのお知らせです」
などなど、ナントカプランやら、ナニホーダイやら、固定電話も携帯も次から次に電話の電話です。

今日は訪問までありました。
固定電話の通話料を値下げしたのなら、躊躇無く下げてといて欲しい。
値上げは黙ってせんといて欲しいけど、下げるんやったら、黙って下げといて欲しいもんです。文句いいませんよ。
携帯は、聞こえたらそれで構いませんわ。
ワンセグたら、新機種やら、まして見た目のデザインはどうでもよろしいです
(機器のデザインは、誰もが使いやすいとか、安全が命やと個人的に思っています)。
なんで新しいものやないとアカンのでしょうか? そこが分からんのです。

手前味噌で申し訳ありませんが、本はその点すごいですよ。
源氏物語なんて1000年前ですからねえ。明治時代の『坊ちゃん』も今読んでも新鮮ですし、山本周五郎の小説には心揺さぶられ、松本清張は人間の真理を突いていると思います。
映画化でまたまた有名になった『指輪物語』は約60年前、『ゲド戦記』は約40年前なのに、これまた人間の奥深くを見据えて読む者を揺さぶりますね。

もちろん、古く汚れた本を売りつけるつもりはありません。でも、本当によいものは時代を超えるのだろうと思います(その作家(画家)自身は、貧窮と失意のうちに死ぬことは多々あります)。今流行しているもの、今もてはやされているものも、一旦遠ざけて冷めた目で見てみると、案外よいものを手にすることが出来るように思いますね。
あれほど持ち上げられてた、ナントカエモンも今は遠く。

・・・盛者必衰の理をあらわす。驕れる者も久しからず。ただ春の夜の夢の如し。

2008.10.25
慌て者騒動記その3
歯医者の巻

歯医者で慌て者? なんですの?それ。
慌て者の話に一見全く関係ないかのような歯医者にも、危険は転がっています。油断めさるな。

あれは、東京に引っ越してきて間なしの頃やった。
散髪屋を探すのにも苦労しましたが(すでに御紹介したとおり)、歯医者探しにもひと苦労。

歯医者さんには、子どもの頃からあんまりええ思い出がありません。
小学校の頃は、夏休み前に歯の検診があって、「C1,C○、C3・・・」と虫歯を指摘され、「夏休み中に、治しておくように」と紙をもろて、歯医者に行くんです。これがまた当時から、混んでる、混んでる。朝から行っても、お昼までかかります。
遊びたい盛りやから、これが苦痛で苦痛でしゃあない。おまけに、あの「キ〜〜ン」という金属音を聞いただけで、何やら歯がうずいてきましたね。
あの頃は、予約制ちゅうものもなくて、行った順番ですわ。「1番の人はこの席」 とか、別に座るとこなんか決まってないんですけど、みんな誰がどの順番で、自分が誰の後か、ちゃーんと把握してるんですねぇ。
あまりに退屈で、僕が待合室の外に出てぶらぶら遊んでいると、「ちょっと、ぼく〜! アンタの番やでぇ〜」と知らないおばちゃんが呼びに来てくれるんです。
「ありがとう!」と言うと、「その次 わたしやから」とか。

前振りが、えろう長うなってしもて、すみません。東京に引っ越してきた話ですね。
東京に来てしばらくして、
「何か、歯が痛うなってきたなぁ〜」という緊急事態。慌てました。
歯医者がどこにあるのかさえ検討つきませんから、夜中に疼くかもしれんと思うと、気が気ではありません。さっそく近所に方に聞いたんです。
「どっか、ええ歯医者ありませんか?」
そしたら、「○○駅の北口歯科がいいんじゃない?」と親切に教えてくださいました。
「○○駅の北口歯科か!」その名前を覚え、電話帳で調べて、早速電話しました。
「すみません、そちら何時まで空いてますか? 今から行きたいんですけど」
「初診の方? ちょっとお待ちください」
受付の方が先生に聞きに行き、先生がのそのそと電話口に出る音がします。
「どうしたの?」
「すみません、虫歯みたいなんです。痛くて・・・」
「そりゃ大変だねぇ。今から来れる? 何分くらいかかる?」
「40分くらいで行けると思いますけど、○○駅から近いですか? どういう風に行きますか?」
「北口を降りたらねえ、左方面へ行って、最初のT字路を右へ。商店街を歩いて、スーパーの角を左へ。そのまま行くと広い道路に出るから、右を見ると看板が見えるよ〜」
「ありがとう、ございます!」
「うん。じゃあ、待ってるからねぇ」
親切な先生やなあ。丁寧に教えてくれたった。待たせたらアカンから、すぐに行こ!
早速出掛け、教えられた通りに、北口を出て、左方面に歩き、最初のT字路の角には怪しげな風俗店があるのを横目に見ながら右へ曲がり、商店街を歩いて、スーパーの角を左折し、広い道路に出たな。さて、右を見る・・・、と。あったがな、看板が! いやあ、丁寧に教えてもろたから、案外早う着いたで〜! 元気よく入り口のドアを空け、保険証を出し、名前が呼ばれるのを待ちました。
その間10分くらいですやろか? 
「ヨネさ〜ん!」
早かったなあ。と、待ち時間が短いことにもすっかり気分をよくした私は、さっそうとイスに座りました。お医者さんが近づいてきます。
「あ〜、あの親切なお医者さんは、この人か。見るからに、親切そうやなあ」
と、感心していた私に、医者が聞きました。
「今日は、どうしました?」
「いや、先生、どうしました?って、さっき電話で説明しましたやん」
「電話? あっそう?」
内心思いました。あっそう?やないやろ? まだそないに高齢には見えんけど、相当お歳なんかいな? 大丈夫かな?ここは・・・。
「もういっぺん説明しますと、歯が痛いんです。虫歯です。右下の奥歯です」
「痛いの? 虫歯?」
「ええ、痛いんです」かなりむっとして答えたわたしに、この医者は言い放ちました。
「虫歯は治せんなあ・・・。ここ内科だから」
「内科? ここ? でも、北口歯科でしょ。看板出てますやん」
「うちは、北口内科。北口歯科は、上」と上を指さすお医者さん。
しばし呆然とする私に、医者はさらに懇切丁寧な説明を加えました。
「外の看板、2つあったでしょ。1階が内科、2階が歯科。ははーん、それで、さっき電話がどうのと言ってたんですねぇ。2階、まだいるかなあ?」
その言葉を聞いた途端、私ははっと我に返り、
「ありがとうございました。2階へ行ってみます!」
脱いだ上着と荷物を持って、その場から逃げるように立ち去り、猛スピードで階段を駆け上り、息を切らせて受付に飛び込むと、
「あ〜、よかった。あんまり遅いから、もう帰ろうと思って、今閉めてたところだよ。どうしたの? 駅から道に迷った? 迷ったにしては、ずいぶん遠くまで行っちゃった?」
「いえ・・・」まだ息が整わないながらも、 「いえ、1階で診察を受けようとしたんです」
「1階? 1階は内科だよ」
「そうなんです。初めて知りました。内科に座って、今日はどうしました? とか先生が聞くもんですから、『さっき電話で説明しましたやん。歯が痛いんです!』 いうて、大威張りで答えたら、『うちは内科だから、虫歯は治せません』と言われました〜」
「うん、そうだね。1階で虫歯を治すのは、ちょっと無理だね。うん、じゃあ、座ったら?」
この先生はどこまでもマイペースやなあ。でも、それだけに安心するわ。
ここでもし、「診察時間外なのに、いつまで待たせるんだ。内科と歯科を間違えるなんて、ばっかじゃないか!」とか言われてたら、憤然と席を立って帰っていたことでしょう。

それにしても、「北口内科」と「北口歯科」なんて、似たような名前をつけんといてよ〜。
まぎらわしいやんか。でも、内科に座って「虫歯を治せ」と言うた人なんか、開院以来誰一人おらんかったみたいです。
なんでも、史上初と言うのは気持ちいい?もんやね。

慌て者の面目躍如たるエピソードでした・・・・。

2008.10.24
慌て者漂流記パート2

慌て者ゆえの冷や汗失敗談その2―お金編

その1.無銭飲食になりかけるの巻
「めし、食いに行こ!」
「お〜!」
あれは、高校2年のときやった。あの頃、いくら身体が小さくても、さすがに中学・高校は、お腹が減って仕方なく、しょっちゅう食べていました。食べるというても、高い物は全くありません。

・お昼にお弁当を食べてから、学校の食堂にウドンを食べに行く。
・学校の帰りに、高校近くのお好み焼きやに食べに行く。
・自転車で家に帰る途中、中華料理屋で焼きソバ定食を食べる。

お好み焼きは、まあ、よう食いましたねえ。ブタ玉1枚200円か250円。1枚食べるたびにサービス券をくれるので、それをためて1枚おまけに食べたり・・・。お小遣いなんてほとんどないから、よう食べたというても、まあ、1週間に1回か2回くらいですやろか。

それよりも、早う、無銭飲食の話をせんかいな!
そうでした、そうでした。あれは、高校2年の頃、友達に誘われて、めったにないことに、高校近くのうどん屋へ行ったんです。
確か、僕は初めて入る店で、メニューなんぞを見て注文し、友達とうどんを食べている最中に、ふと、嫌な予感が・・・。
そうなんです。財布を持たずに、うどん屋に入って、お金も無いまま、うどんをほぼ全部食べてしもてから、この冷酷な事実に気づいたのです。
ポケットに手を入れて、隣の友達に一言。
「財布ないわ」
「なに〜! お前、財布も持たんと、うどん食うたら、無銭飲食やんけ!」
「そうならんように、金貸して」
「俺も持ってなかったら、どないするつもりや?」
「そしたら、2人とも無銭飲食やんけ!」
「なに、威張っとんや。しゃあない、貸しとこ」
無論、翌日すぐに返したことは言うまでもありません。
食べる前に気づいたなら、未遂ですむところを、ほとんど食べてしもてから、気づくなんてなあ・・・。と
ほほな高校時代の私なのであった。

その2.名古屋から帰れんようになるの巻
あれは大学を卒業して4〜5年経った頃、愛知県に帰った後輩から「私たち 結婚します!」のハガキが届きました。
「あの、堅物がなあ。一心不乱、直球しか投げません、みたいな奴がなあ。よかったよかった。でも、愛知県一宮? どこやねん、それは・・・」
結婚式に出席するからといって、別に散髪屋に行くわけでもなく、服を選ぶわけでもなく、「どうぞ、平服でお越しください」の一文をかなり重視して、自らのみすぼらしさを忘れる、わたしなのであった。

それでも、それなりに準備していけばいいものを、「名古屋まで新幹線やから」
と、会場まで行く経路も全然調べず、大体の目処をつけて、当日、名古屋までの切符を買って新幹線に飛び乗ったわたし。
何も考えず、ぼーっっと、外の風景を眺め、やがて新幹線は岐阜羽島を過ぎ、「あ〜、いよいよ名古屋だがや」「まあだ、岐阜羽島だがや。おみゃー」などと、一人でボケと突っ込みを演じていたわたしの脳裏に、ある重大な事態がひらめきました! 冴えている!
「う〜ん、名古屋までの行きの切符は買うたけど、名古屋から帰る切符はどないしよ? お金持ってたかいな?」
おもむろに、財布を取り出して、じっくり中身を点検すると、なんと、3000円くらいしかありません。
「なんちゅうこっちゃ。これやったら帰れへんやんか! というより、結婚祝賀会の参加費もないで! そもそも、一宮っちゅうところにたどり着けるんかいなぁ〜!」
余りのむごい現実にしばし呆然とし、血の気が失せていくわたしなのであった。
しかも、その頃は、キャッシュコーナーは平日しか開いてなかったんです。結婚式は当然休みの日ですから・・・。

しかし、その直後、またまた、あるひらめきが!
「そやそや、一宮がどこにあるんか知らんけど、片道3000円もするような遠いところにはないやろ。行けるはずや。何とか会場にたどり着いたら、あいつも来てるやろ。そやそや、あいつに借りよ! あいつやったら、貸してくれるやろ!」
(「あいつ」とは、私の同級生で、結婚する後輩の共通の先輩なのです)
あまりにうまい思いつきに密かにほくそ笑むわたし。

名古屋から人に聞きながら、何とか会場にたどり着いたわたしの目に飛び込んできた、友達のK君。
「あのなあ、お金持ってる?」
「なんで?」
「悪いけどなあ、貸してくれへんか。財布の中に、あとこれだけしかないねん」
わたしが開いて見せた財布をじっと覗き込むK君。
「お前、ようそれでここまで来たなあ。感心するわ。今日の参加費もないやんか」
「そうなんや。ここまで来て帰るわけにはいかんやろ」
「そらそや、しゃあない。貸しとくわ」
持つべき物は友。可哀相なK君は、なけなしのお金から僕の参加費と帰りの切符代を貸してくれたのであった・・・。
人間の出来たK君に、わたしがすぐにお金を返したのは言うまでもない。かなり迷惑な結婚式の出席者、それが20代半ばのわたしなのであった。

ちなみに、この頃は日頃ジャージなんかを着て、スリッパ(つっかけ)とかで歩いていたので、用事があって東京に行った際、当然新幹線にもスリッパで乗り込んだんです。もちろん、ジャージです。東京で会った人に、言われました。
「その格好で新幹線に乗ってきたんですか?・・・・・」
彼の視線は、さっきからわたしのスリッパに釘付け。その後、異物でも見るように、ジャージの上下を眺めています。

「このジャージ? ええやろ。竹の子族から買うてん!」

ウソついたらあきませんでえ〜!

2008.10.23
生来の慌て者です。
毎日朝出かけては、「財布を忘れた」「定期を忘れた」「カギを締めたかな?」「窓が開きっぱなしや」・・・・、ようまあ、しょっちゅう色んなものを取りに家に帰るんです。そのたびに連れ合いからは、「必ずいっぺんは帰らんとアカンみたいやなあ」と言われるんです。「あわてんぼうのおつかい」という歌がありましたが、それを日々実践している律義者です。

忘れ物で一番古い記憶は、幼稚園のときです。何を忘れたかって? ズボンをはくのを、忘れたんです!
あれは、冬の寒〜い日。
わたしらの故郷は、瀬戸内海に面していますから、「温かくていいですね」と東京の方にも言われるんですけど、ところがどっこい、少なくとも東京よりはよほど寒かったですね(今は、温暖化しているのかもしれませんが)。高校が自転車通学だったですが、冬場はしょっちゅう道路が凍るんです。これがまた、怖い怖い。学校に着くまでに、何べんコケるかわかりません。自動車でも走ってこようものなら・・・。ですから、道路凍結日は遅刻が許されるんです。
まあ、それはそれとして、何せ寒いですから、子どもの頃は毛糸のパンツをはいていたんです。ものすごくイヤやったんですけど、「イヤや」と言おうものなら、母の雷がどかーんと落ちてきますからね、しゃあない、はいて行こ!
その日も、いやいや毛糸のパンツをはいて、「行ってきまーす!」と幼稚園に向けて、てくてく歩き、もう幼稚園が見えてきたと思ったときに、はたと気が付いたんです。「ズボン、はき忘れた!」
あ〜えらいこっちゃ〜、でも今から家に帰ったら遅れてしまうし、でも格好悪いし、情けない。どないしょ〜。
そこでピカリとひらめきました。このまま誤魔化そ!
幸いなことに、毛糸のパンツが紺色やったんです。しかも、背が小さかった(今でも)もんですから、スモックが大きくて、半ズボンをはいてもそれが隠れるくらい長かったんです。
しめた、これだけ上が長かったら、バレへんやろ。

ズボンをはいていないことがバレへんように、十分気をつけて、みんなと一緒に遊び、時々はいてないことを忘れて大胆なポーズをとっては、「アカンアカン!」 と慌ててスモックを下に引っ張り・・・。
そんなことを何回かくり返すうちに、なんと、無事帰りの時間を迎えたんです!
あ〜よかった! バレへんかった! なんとかなるもんや!

恐らくこの時、変にうまく行ったという幼児体験が、未だに忘れ物をしてしまう情けない性格につながってるんかもしれませんなあ〜。

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